Installation
PLEIADES + FIBONACCI KECAK + neuro-architecture
&
Ensemble STAR CAGE

Exhibition "program seed"   京都芸術センター講堂

8th - 24th March 2002

Copyright 2002 Akio HIZUME

DOCUMENT


9th March 2002

  3/9に参加者30人を集め、最もシンプルな星籠「30本六勾」を作るワークショップを行った。素材は長さ2mの竹。1チーム5人で星籠1体を作る。力を合わせるには5人がちょうど良い。最終的に「30本十勾」と「六勾×十勾」2体を加え、ウイルスのかたちをした星籠が全部で8体、あっという間に講堂内に繁殖した。星籠の中心にランプを入れ、コンピュータ制御による8声のフィボナッチ・ケチャックに同期して点滅させた。誰ともなく、参加者はこの瞬間を「火入れ」と呼んだ。
 さらにそれぞれの星籠をニューロ・アーキテクチャーの配置で並べ、一体は天井から吊るすことにした。
 8声のフィボナッチ・ケチャックは一拍3秒として、100年以上変化し続ける。会期は17日間という短い時間だが、この音楽を流せるだけ流し続けた。
 海岸に打ち寄せる波のパターンは人を飽きさせないように、多くの人がこの音楽空間に同様の安息と刺激を感じてくれたようだ。静かなる昂揚。。。この音楽には乱数的な要素は皆無である。恣意の介入する余地のない、きわめて厳密な数学的規則そのものであるにもかかわらず、人はそこに安息を感じる。ある種の自由を感じると言ってもいい。こんな「数学」がいままであったろうか?
 かくしてこのインスタレーションは、同一空間に「星籠」「ニューロ・アーキテクチャ」「フィボナッチ・ケチャック」を統合し、3次元空間、2次元空間、1次元空間すべてにわたる同型な準周期構造を現出させるまでに発展した。



環状に並ぶ8体の小プレアデスは、それぞれ5拍、8拍、13拍、21拍、34拍、55拍、89拍、144拍のリズムを刻む。

8体の大きな星籠も、独自のリズムで呼吸する。

 展示台の上で3本足で立つ大きなプレアデスは南牧産の杉でできている。プレアデスには4種類の立体異性体が存在し、そのうち2種類は畳むことができ、他の2種類は畳むことができない。足もとの小さな8個のプレアデスは畳める構造だが、大きな方は畳めない構造である。このカイラリティの違いに気付く人はきわめて稀である。
 大きなプレアデスの頂点は、2本のボルトで剛接合している。畳めない組み方であるゆえに、自重で変形することもなく、会期中ずっと3本足で立ち、微動だにしなかった。

フィボナッチ・ケチャック ワークショップ
Ensemble STARCAGE

23rd March 2002

 3/23に音楽ワークショップを行った。題して「アンサンブル スター・ケージ」である。
 50人が集まり、10人ずつ5つのパートに別れ、竹のバチでフィボナッチ・ケチャックを演奏した。事前の予想では、こんなに多人数で合奏するとカオスにしかならないのではと危惧されたが、豈図らんや、ふたをあけてみれば予想以上に合い、なかなかgroovyだった。人数が多ければ多いほどむしろうまく行くのかも知れない。ちょっと鳥肌がたったほどだ。
 指揮者はどこにもいない。はじまりもおわりもない音楽。明確なクライマックスがあるわけでもない。一応規則に従ってはいるが、そこには不思議な自由がある。特にプロの演奏家が集まったわけでもない。誰に聞かせるわけでもない。観客はどこにもいない。演奏家自身が音を作り、それを同時に享受する。やってみればその方が音楽として自然なあり方のような気がする。コオロギやカエルや蝉たちの気持ちが、少し理解できたような。。。というより、私達の身体には彼等が使う論理と同じかたちが眠っていたのであろう。

 参加者の中に、まるで子供の頃からこのリズムに親しんでいたかのように、ほれぼれするほどうまく34拍のリズムを打つ人がいた。よほど身体に合ったリズムだったのだろう。普段何をされている方なのか気になる。 そこで急遽思いつき、各チームから代表者を出していただいて、試みに五人囃子を演奏してもらった。実に見事なアンサンブルが完成した。こんなに短時間にぴたりと合った演奏に仕上がるとは思ってもいなかった。いままで公私ともに、何度もフィボナッチ・ケチャックを演奏してきたが、こんなことは初めてである。コンピューターの演奏が限り無く色褪せて見えた。
 このワークショップの参加者は、今後、変拍子の音楽しか受け付けない身体になってしまったはずである。これを知ったらもう元には戻れない。ほかならぬ、僕自身がそうだったから。


協力
龍谷大学理工学部四ッ谷研究室
銘竹問屋 竹平商店(京都市)
市川工務店(南牧村)
佐藤嘉吉氏(富岡市)


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