2007-07-14 Sat [ 作品 ]
by 日詰明男
向陽舎「薔薇と海賊」を見た。http://koyosha.blog107.fc2.com/
意表をつく冒頭部から、気が付けば劇中に引き込まれていた。
2時間に及ぶ上演時間が全く長く感じられなかった。
面白い演劇である。
役者も生き生きと演じていた。
間口の広い作品だと思う。
照明や音響の演出も心憎いほど行き届いていた。
三島の戯曲をいくつか観たが、一貫してソクラテス=プラトンが指し示した「狂気のイデア世界」を現前させようとしているように見える。
それこそが真のリアリティなのだと。
劇中劇、劇中実、実中実、実中劇の階層が入り組んだ虚実の反転。
あらゆる価値観の転覆。
これ以上の革命があるだろうか。
それを三島は最後まで夢見た人だったのだろう。
人間が人間の演ずる劇を見て楽しむということ、それ自体が、考えれば考えるほど面白いことだ。楽しかった劇を見終わった後にいつも思う。
「演劇」という仕掛けもまたギリシャが起源である。
人間の滑稽さがとてもいとおしく、そんな人間に生まれてよかったと思う。
会場の天井からは色とりどりの色水が入った風船が吊るされていた。
それを主人公の松山帝一が玩ぶ。
幼児の頃(40年以上前)聴いた童謡「ドロップスの唄」を思い出した。
「むかし 泣き虫かみさまが
朝やけ見て 泣いて
夕やけ見て 泣いて
真っ赤な涙が ポロン ポロン
黄色い涙が ポロン ポロン
それが世界中に 散らばって
今では ドロップス
子どもがなめます ペロン ペロン
おとながなめます ペロン ペロン
むかし 泣き虫かみさまが
悲しくても 泣いて
うれしくても 泣いて
すっぱい涙が ポロン ポロン
あまい涙が ポロン ポロン
それが世界中に 散らばって
今では ドロップス
子どもが食べます チュルン チュルン
おとなが食べます チュルン チュルン」(まど・みちお作詞/大中恩作曲)
あの唄好きだったなあ。
|| 15:06 | comments (x) | trackback (x) | △ ||
2007-07-14 Sat [ 政治経済 ]
by 日詰明男
書店に行くと、平積みにされた雑誌の中に、聖セバスチャンとして描かれた三島由紀夫の像(横尾忠則作「理想の実現」)が目に入った。STUDIO VOICEの表紙である。
なんと今号のテーマは「政治を考える」である。
緊急特集といった風情だ。
http://www.infaspub.co.jp/studio-voice/newest.html
STUDIO VOICEがこのような特集に打って出るということは、よほどのことである。
時代のさしせまった空気を、もっとも敏感に感知する人たち。
こういうところから口火が切られるのだろう。
企画は柄甚原権三とある。
巻頭言には
「・・・
さまざまな局面で、あなたは行く手を阻まれる。
そこで発見するのは、敵とそっくりな姿をしたあなた自身だ。
・・・ 」
とあり、問題の急所を見事に言い当てている。
末尾は
「動かそう。」
の一語で結ばれ、心に確かに響いた。
記事内容も先鋭で、他の自称リベラルな言論雑誌よりはるかに琴線に触れるところが多い。
寄稿者は田中康夫、宮台真司、大澤真幸、外山恒一、竹熊健太郎、雨宮処凛などなど。
いままで沈黙するほかなかった、あるいはその反動で強がりを言うしかない「虐げられた若者たち」が、いよいよ動かなければどうにもならないと行動を起こし始めている。
鉄道人身事故が毎日のように起こり、それがあたりまえになっている恐ろしい日常。
この国は今ベトナム戦争の真只中にある。
|| 12:13 | comments (x) | trackback (x) | △ ||