2011-04-04 Mon [ 原子力発電 ]
by 日詰明男
先の松本夏樹氏による論考「Iconologia politica 断章」の補足がありました。以下引用。
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日本人はあまりにも歴史観がなく、目前の現象に振り回され過ぎます。僅か140年前の近代化開始すら視野に入れた論評がありません。人間はユングの云う宗教的動物として、表面上は合理性を標榜する如何なる学問も思想もその理不尽な行動を規制する事は出来ず、唯一死を恐れる生物たる人間は、近代主義の云う合理的普遍価値に依ってではなく、文化環境に決定された宗教的表象に従ってのみ行動するのが変わらざる本質であると考えます。従って特に西欧の普遍的価値、思想であれ科学であれ、を主張するものは他文化の異論を結果的に排斥し、それを進歩と称します。それが宗教的表象の機制に無自覚な近代主義です。もっとも反近代主義は良く言っても文化的棲み分けでしかなく、人類共通の普遍的価値も進化も視野にないので、個々の死の不安への宗教的表象からする救いはあっても各文化圏自体は徐々に萎縮し滅亡するでしょう。悲観的ですがこれは有史以来不変です。
アメリカの牧師がコーランを焼いたのをきっかけとして、アフガンの反米暴動とタリバーンのテロで多数の死者が出ました。 牧師はまた焼くそうです。石原都知事の地震天罰発言(もし天罰を受けるべき者がいるとすれば、一度ならず二度までも日本に放射能を浴びせた、石原をその嚆矢とする明治以来の保守主義者でしょう)も同じく、宗教的動物の本質たるイントレランスを示しています。いわゆる進歩主義者は北アフリカの各政権崩壊の激変をフェイスブック革命などと囃したてますが、ITをツールとしていてもその本質はホメイニ革命と同じくイスラム主義です。非寛容な宗教国家アメリカと同じくイランも核武装を目指すのは必然的なので、ユーロ圏神聖ローマ帝国、中華帝国、ピューリタンアメリカと並んで、核武装したサラセン帝国が出現するのでしょう。
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以上引用。
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2011-04-04 Mon [ 原子力発電 ]
by 日詰明男
引き続き松本夏樹氏の論考を引用します以下引用。
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この文章は3 月11日午後 2時50分地震発生の瞬間に、若江漢字さんのミュージアム・ハウスカスヤ発行の冊子に載せる為に送ったものです。先ほどの原発政策の補足としてお読み下さい。
Iconologia politica断章
前教皇ヨハネ・パウロ二世は、二千年紀が終わり新たな三千年紀(新ミレニウム)が始まるとき、ヴァティカンで扉を開く儀式をおこなった。カトリック、プロテスタント、正教の別を問わず、また個々の信仰の有無は別にしても、キリスト教文化圏の全ての人々(人類の四人に一人以上)にとって新ミレニウムは「ヨハネによる黙示録」の終末のイメージと分かち難く結びついている。それは毎年のクリスマスの時期が、信仰とは別にこの文化圏に生きる人々の敬虔な気分と結びついているのと同様である。 その三千年紀の始まりの年の9月11日、世界の盟主たるアメリカの世界貿易センターの二つの塔が、天上からの鉄槌によるかの如く炎に包まれ瞬時に瓦解するさまが、全世界にライヴ中継された。そのイメージは見た者の立場の相違を超えて、黙示録に云う終末の悪の都、世界の富と権力を集め欲望と義人の血の杯に酔い痴れる大淫婦、最後の審判の時に神の怒りの炎によって滅ぶ大いなるバビロンの姿以外ではなかった筈だ。またキリスト教以外
の一神教、ユダヤ教とイスラム教圏(ほぼ人類の四人に一人)でも、神の域に達しようとする人間の傲慢さが罰せられる、あのバベルの塔をそこに見たであろう。
ただキリスト教原理主義者たる清教徒が建国したアメリカの多くの人々の心の中では、凄まじい葛藤が生じたに違いない。神の前にピュアである者が作り出した国家、世界の正義を守るべき富が、神の怒りに滅ぶ大いなるバビロンである筈がない!だが一瞬とはいえ、終末の悪の都を自らに重ねて見させられてしまったという事実は、絶対に許すことの出来ない邪悪な存在、神の国アメリカを攻撃する反キリストの仕業に違いない!ならば再び「十字軍」を、「無限の正義の戦い」(この二つの言葉は、キリスト教原理主義者であるブッシュ前大統領が事件後に発言し、後に撤回した)を開始せねばならない…。
アメリカ人の心の深奥のどこかで、世界の盟主として世の富を集めることへの神に対する清教徒的やましさがあり、その中心たる塔が崩壊するさまは、神に対する傲慢と無限の欲望に鉄槌が下ったのだと、自らを罰する思いが些かなりともあったかも知れない。だが同時に、自らの原理主義ゆえの国外追放を神の約束の地への巡礼と捉えて、初代清教徒をピルグリムファーザースと呼ぶアメリカの、我こそ義人なりとする止みがたい自己肯定は、この疚しさと決して相容れぬものであり、それゆえに敵、邪悪は誰か他者でなければならない。こうした、他の文化圏からみれば病理的としか思われない心の反応が、それだけではないにせよアメリカを実際の軍事行動へと駆り立て、今も続く戦乱を招来した事を考えれば、あのライヴ映像が人類の半数に喚起した聖書的イメージの図像学的解析は、一神教文化とはほとんど無縁な我々にとっても無視する事の出来ないアクチュアルなテーマではなかろうか。
先にクリスマスの敬虔な気分と言ったが、1941年12月8日の真珠湾攻撃は現地時間では7日の日曜日の朝であった。クリスマスを待つ待降節の主日、荒くれ漢の水兵でも故郷の母親が焼いて送ってくれるケーキや、幼い頃クリスマスツリーの下にあったプレゼントを思い浮かべて素直で敬虔な気分になる日曜の朝に、開戦通告もなしにいきなり攻撃して来た者は疑いもなく人間とは呼べない邪悪な存在なのであり、この敵の二つの都市を神の怒りの炎がソドムとゴモラのように焼き尽くして、正義の下にあるアメリカ兵の命がそれで救われたのである…。日本人が、それは違う「ノーモア・ヒロシマ」と如何に言おうが、多くのアメリカ人の心の奥には厳然としてそうした宗教的イメージが存在しているのであり、「リメンバー・パールハーヴァー」とはそうした宗教的憤激を意味するのである。とはいえ、大日本帝国の戦争指導者たちが図像学的解析を基にキリスト教圏独特の心理反応を予期して、クリスマス月の日曜日の攻撃を避けていたとしても、帝国「憲法」とは名ばかりで現人神天皇への信仰を国是とするが如き(それはキリスト教のニカイア信経、クレドに等しい)宗教国家がどこまでその原理主義者的戦争を継続できたかは極めて疑わしい。
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以上引用。
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2011-04-04 Mon [ 原子力発電 ]
by 日詰明男
友人の松本夏樹氏の見解を、氏の許可の下に転載します。以下引用。
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日本の原発政策は、朝鮮戦争に原因があります。北朝鮮軍に釜山まで追い詰められた時、マッカーサーは北京に原爆投下をとトルーマンに進言しましたが、大統領はソ連の反撃を恐れて却下、元帥は罷免されました。しかし休戦後、ソ連と中国と北朝鮮への核抑止力として日本に潜在的核保有の力を持たせるようにと、軍の強い要請があり、英雄マッカーサーを罷免した以上、大統領は軍と軍事産業に妥協する必要がありました。当時はまだ大陸間弾道弾が無くB29しか核搭載の方法が無かったので、日本の基地からしか共産圏を攻撃できなかったからです。表の政策では吉田茂の、失業軍人吸収の警察予備隊から自衛隊、裏の政策はアメリカ認可の核制御技術とプルトニウム製造です。そこで50-60年代など大した電力消費がないにも拘わらす、自国で賄える石炭産業を弾圧して石油輸入に転換、そしていよいよ原発や原子力船むつなどの開発政策を進め、燃料ウラン235からプルトニウムを生産する事でアメリカの意に添ったのです。旗振り役は内務省特高上がりで、戦争協力者パージが解けて読売新聞に招かれた正力松太郎で、力道山人気で民放テレビを(家電推進と国民総白痴化)、そして原発で文字通り明るい日本を推進しました。メディアは高度成長期で電力消費が伸びて、資源の無い日本には原発が必要、さらに炭素を出さない原子力はエコだから高い濃縮ウランより廃物利用のプルサーマルをとの論調で一致していますが、広島のウラン型と長崎のプルトニウム型で人体実験したアメリカが許し、冷戦下で推進しなければ、日本のウラン濃縮やプルサーマル原発建造など出来るわけがありません。3号機はMOX燃料です。
11日以後の、特に読売、産経系のテレビに出演した東大、東工大系の原子力関係の専門家はとにかく安全だとのみ発言、ひどいのは1号機爆発の際、あれは意図的に爆破弁で圧力を下げたので大丈夫だとか、病院から避難した患者が被曝していたと報じられると、あれは病院のエックス線管理の杜撰さであるかも知れないと発言していた事です。なぜ東大、東工大系の学者はこうも浅ましいのでしょうか?
数学者なら紙と鉛筆があれば研究出来ますが、原子力研究には実験機器にも何億とかかります。東電と国の金が無ければ先生達は研究室も地位も保てず、教え子を東電と経産省に送り込んで産学官派閥を作る事も出来ません。新聞も民放も電力会社と国に睨まれたら広告料が減るだけではすみません。東工大出身の管総理を事故の重大性を隠して福島原発視察に行かせたのも、また家庭用交流電力の僅かな不足に、直流モーターである電車を大した効果も無いのに運休させて、首都圏機能を人質にして電力不足の不安を煽って原発政策を維持させようとするのも、全てアメリカの黙認を背景とした官僚と東電の仕業です。明治政府はドイツ・アルゲマイネ社の毎秒50回転の発電タービンと、アメリカ・GE社の毎秒60回転の発電タービンの猛烈な売り込み合戦と賄賂に負けて東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツにしてしまいました。近代化の過程で国家の中に共有出来ない電力配置を有するのは日本だけです。戦後インフラが破壊され、困難ではあってもヘルツを統
一できる唯一の可能性がありましたが、GHQは敢えてそうしませんでした。
救助を名目に太平洋艦隊の空母ロナルド・レーガンが福島沖10キロに急遽派遣されましたが、大型ヘリコプターではなく戦闘機搭載したままでやって来て、微量放射能を測定した直後に沖80キロまで後退しました。米軍にとっての問題は気化したセシウムやヨウ素ではなく、中性子線とプルトニウムの観測です。昭和20年8月の進駐軍の被爆者調査と同じです。
東電の我が身可愛さのみのいじましい事故報告から陸上・海上自衛隊幕僚長の記者会見に変わりましたので、事故対処が軍事行動になったという事です。万が一炉心溶融~臨界から中性子線放射とプルトニウム飛散となったら軍は直ちに防衛ラインを80キロ後退させて人もモノも出入り禁止とします。そのために陸上自衛隊特殊武器処理部隊(核兵器部隊)と戦車を派遣しています。軟弱な政治家などには不可能な、極めて有能な軍事官僚の実践的挙国一致行動なので、命がけの救命活動に反論できる日本人はいません。いれば非国民です。
やはりメルトダウンしていたので、チェルノブイリ式石棺化、80キロの広域汚染地帯設置、そして東電国有化という流れなんでしょうね。誰も嫌と言えない国家総動員法的な、欲しがりません勝つまでは、がんばれ日本が不愉快です。鶴見俊輔だけが、日本の脱キリスト教近代化と西南戦争から軍部暴走を経て、二つの原爆と戦後保守政権の延長上にフクシマを検証せよと論じていました。後は、美しい日本の私ガンバレ的センティメントか、例によって東のネット草の根ポピュリズム待望論だけです。
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以上引用。
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