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Iconologia politica断章
by 日詰明男
引き続き松本夏樹氏の論考を引用します

以下引用。

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この文章は3 月11日午後 2時50分地震発生の瞬間に、若江漢字さんのミュージアム・ハウスカスヤ発行の冊子に載せる為に送ったものです。先ほどの原発政策の補足としてお読み下さい。

Iconologia politica断章

前教皇ヨハネ・パウロ二世は、二千年紀が終わり新たな三千年紀(新ミレニウム)が始まるとき、ヴァティカンで扉を開く儀式をおこなった。カトリック、プロテスタント、正教の別を問わず、また個々の信仰の有無は別にしても、キリスト教文化圏の全ての人々(人類の四人に一人以上)にとって新ミレニウムは「ヨハネによる黙示録」の終末のイメージと分かち難く結びついている。それは毎年のクリスマスの時期が、信仰とは別にこの文化圏に生きる人々の敬虔な気分と結びついているのと同様である。 その三千年紀の始まりの年の9月11日、世界の盟主たるアメリカの世界貿易センターの二つの塔が、天上からの鉄槌によるかの如く炎に包まれ瞬時に瓦解するさまが、全世界にライヴ中継された。そのイメージは見た者の立場の相違を超えて、黙示録に云う終末の悪の都、世界の富と権力を集め欲望と義人の血の杯に酔い痴れる大淫婦、最後の審判の時に神の怒りの炎によって滅ぶ大いなるバビロンの姿以外ではなかった筈だ。またキリスト教以外
の一神教、ユダヤ教とイスラム教圏(ほぼ人類の四人に一人)でも、神の域に達しようとする人間の傲慢さが罰せられる、あのバベルの塔をそこに見たであろう。
ただキリスト教原理主義者たる清教徒が建国したアメリカの多くの人々の心の中では、凄まじい葛藤が生じたに違いない。神の前にピュアである者が作り出した国家、世界の正義を守るべき富が、神の怒りに滅ぶ大いなるバビロンである筈がない!だが一瞬とはいえ、終末の悪の都を自らに重ねて見させられてしまったという事実は、絶対に許すことの出来ない邪悪な存在、神の国アメリカを攻撃する反キリストの仕業に違いない!ならば再び「十字軍」を、「無限の正義の戦い」(この二つの言葉は、キリスト教原理主義者であるブッシュ前大統領が事件後に発言し、後に撤回した)を開始せねばならない…。
アメリカ人の心の深奥のどこかで、世界の盟主として世の富を集めることへの神に対する清教徒的やましさがあり、その中心たる塔が崩壊するさまは、神に対する傲慢と無限の欲望に鉄槌が下ったのだと、自らを罰する思いが些かなりともあったかも知れない。だが同時に、自らの原理主義ゆえの国外追放を神の約束の地への巡礼と捉えて、初代清教徒をピルグリムファーザースと呼ぶアメリカの、我こそ義人なりとする止みがたい自己肯定は、この疚しさと決して相容れぬものであり、それゆえに敵、邪悪は誰か他者でなければならない。こうした、他の文化圏からみれば病理的としか思われない心の反応が、それだけではないにせよアメリカを実際の軍事行動へと駆り立て、今も続く戦乱を招来した事を考えれば、あのライヴ映像が人類の半数に喚起した聖書的イメージの図像学的解析は、一神教文化とはほとんど無縁な我々にとっても無視する事の出来ないアクチュアルなテーマではなかろうか。
先にクリスマスの敬虔な気分と言ったが、1941年12月8日の真珠湾攻撃は現地時間では7日の日曜日の朝であった。クリスマスを待つ待降節の主日、荒くれ漢の水兵でも故郷の母親が焼いて送ってくれるケーキや、幼い頃クリスマスツリーの下にあったプレゼントを思い浮かべて素直で敬虔な気分になる日曜の朝に、開戦通告もなしにいきなり攻撃して来た者は疑いもなく人間とは呼べない邪悪な存在なのであり、この敵の二つの都市を神の怒りの炎がソドムとゴモラのように焼き尽くして、正義の下にあるアメリカ兵の命がそれで救われたのである…。日本人が、それは違う「ノーモア・ヒロシマ」と如何に言おうが、多くのアメリカ人の心の奥には厳然としてそうした宗教的イメージが存在しているのであり、「リメンバー・パールハーヴァー」とはそうした宗教的憤激を意味するのである。とはいえ、大日本帝国の戦争指導者たちが図像学的解析を基にキリスト教圏独特の心理反応を予期して、クリスマス月の日曜日の攻撃を避けていたとしても、帝国「憲法」とは名ばかりで現人神天皇への信仰を国是とするが如き(それはキリスト教のニカイア信経、クレドに等しい)宗教国家がどこまでその原理主義者的戦争を継続できたかは極めて疑わしい。

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以上引用。

|| 18:08 | comments (x) | trackback (x) | ||
松本夏樹氏の見解
by 日詰明男
友人の松本夏樹氏の見解を、氏の許可の下に転載します。

以下引用。
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日本の原発政策は、朝鮮戦争に原因があります。北朝鮮軍に釜山まで追い詰められた時、マッカーサーは北京に原爆投下をとトルーマンに進言しましたが、大統領はソ連の反撃を恐れて却下、元帥は罷免されました。しかし休戦後、ソ連と中国と北朝鮮への核抑止力として日本に潜在的核保有の力を持たせるようにと、軍の強い要請があり、英雄マッカーサーを罷免した以上、大統領は軍と軍事産業に妥協する必要がありました。当時はまだ大陸間弾道弾が無くB29しか核搭載の方法が無かったので、日本の基地からしか共産圏を攻撃できなかったからです。表の政策では吉田茂の、失業軍人吸収の警察予備隊から自衛隊、裏の政策はアメリカ認可の核制御技術とプルトニウム製造です。そこで50-60年代など大した電力消費がないにも拘わらす、自国で賄える石炭産業を弾圧して石油輸入に転換、そしていよいよ原発や原子力船むつなどの開発政策を進め、燃料ウラン235からプルトニウムを生産する事でアメリカの意に添ったのです。旗振り役は内務省特高上がりで、戦争協力者パージが解けて読売新聞に招かれた正力松太郎で、力道山人気で民放テレビを(家電推進と国民総白痴化)、そして原発で文字通り明るい日本を推進しました。メディアは高度成長期で電力消費が伸びて、資源の無い日本には原発が必要、さらに炭素を出さない原子力はエコだから高い濃縮ウランより廃物利用のプルサーマルをとの論調で一致していますが、広島のウラン型と長崎のプルトニウム型で人体実験したアメリカが許し、冷戦下で推進しなければ、日本のウラン濃縮やプルサーマル原発建造など出来るわけがありません。3号機はMOX燃料です。
11日以後の、特に読売、産経系のテレビに出演した東大、東工大系の原子力関係の専門家はとにかく安全だとのみ発言、ひどいのは1号機爆発の際、あれは意図的に爆破弁で圧力を下げたので大丈夫だとか、病院から避難した患者が被曝していたと報じられると、あれは病院のエックス線管理の杜撰さであるかも知れないと発言していた事です。なぜ東大、東工大系の学者はこうも浅ましいのでしょうか?
数学者なら紙と鉛筆があれば研究出来ますが、原子力研究には実験機器にも何億とかかります。東電と国の金が無ければ先生達は研究室も地位も保てず、教え子を東電と経産省に送り込んで産学官派閥を作る事も出来ません。新聞も民放も電力会社と国に睨まれたら広告料が減るだけではすみません。東工大出身の管総理を事故の重大性を隠して福島原発視察に行かせたのも、また家庭用交流電力の僅かな不足に、直流モーターである電車を大した効果も無いのに運休させて、首都圏機能を人質にして電力不足の不安を煽って原発政策を維持させようとするのも、全てアメリカの黙認を背景とした官僚と東電の仕業です。明治政府はドイツ・アルゲマイネ社の毎秒50回転の発電タービンと、アメリカ・GE社の毎秒60回転の発電タービンの猛烈な売り込み合戦と賄賂に負けて東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツにしてしまいました。近代化の過程で国家の中に共有出来ない電力配置を有するのは日本だけです。戦後インフラが破壊され、困難ではあってもヘルツを統
一できる唯一の可能性がありましたが、GHQは敢えてそうしませんでした。
救助を名目に太平洋艦隊の空母ロナルド・レーガンが福島沖10キロに急遽派遣されましたが、大型ヘリコプターではなく戦闘機搭載したままでやって来て、微量放射能を測定した直後に沖80キロまで後退しました。米軍にとっての問題は気化したセシウムやヨウ素ではなく、中性子線とプルトニウムの観測です。昭和20年8月の進駐軍の被爆者調査と同じです。
東電の我が身可愛さのみのいじましい事故報告から陸上・海上自衛隊幕僚長の記者会見に変わりましたので、事故対処が軍事行動になったという事です。万が一炉心溶融~臨界から中性子線放射とプルトニウム飛散となったら軍は直ちに防衛ラインを80キロ後退させて人もモノも出入り禁止とします。そのために陸上自衛隊特殊武器処理部隊(核兵器部隊)と戦車を派遣しています。軟弱な政治家などには不可能な、極めて有能な軍事官僚の実践的挙国一致行動なので、命がけの救命活動に反論できる日本人はいません。いれば非国民です。
やはりメルトダウンしていたので、チェルノブイリ式石棺化、80キロの広域汚染地帯設置、そして東電国有化という流れなんでしょうね。誰も嫌と言えない国家総動員法的な、欲しがりません勝つまでは、がんばれ日本が不愉快です。鶴見俊輔だけが、日本の脱キリスト教近代化と西南戦争から軍部暴走を経て、二つの原爆と戦後保守政権の延長上にフクシマを検証せよと論じていました。後は、美しい日本の私ガンバレ的センティメントか、例によって東のネット草の根ポピュリズム待望論だけです。

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以上引用。



|| 15:13 | comments (x) | trackback (x) | ||
3/14の3号機爆発について
by 日詰明男
指摘する人があまりいないのが不思議だが、3号機タービン建屋の屋根に穴が開いているのは何を意味するか。
タービン室は原子炉の奥の院ともいえる「圧力容器」と直接太いパイプでつながっている。
したがってタービン建屋の爆発は圧力容器内部のものと連動したと考えるのが自然だ。
圧力容器に酸素はないから、これは水素爆発ではない。
3号機の爆発では1号機と異なり、最初に大きな炎が見え、黒煙が上がった。
3号機建屋の上部が、外観から見ても、核燃料プールもろとも吹き飛んでいるとしか見えないこと。
格納容器および圧力容器の健全な姿は未だに確認できない。
熱によると思われる鉄骨の変形も尋常ではない。
隣の4号機の使用済み燃料がその直後に燃え始めたのは、単に冷却系が失われただけの理由ではないだろう

米軍の無人偵察機「グローバルホーク」が撮影した3号機の鮮明な写真が政府に提供されたというが、「正しいパニック」を恐れるのか、未だに公開されないのが不気味である。
こうした不透明性が「誤ったパニック」を誘うものなのに。

格納容器と圧力容器の強度が安普請あるいは老朽によって低かったせいで、あの程度の爆発だったのかもしれない。
とにかく3号機の内容物は相当露出し飛散したと思われる。
これが実態だとすると、注水などしている場合ではないのではないか。

当局はチェルノブイリのレベル7、あるいはそれ以上のであることを何が何でも認めたがらないだろうが。


|| 11:15 | comments (x) | trackback (x) | ||
「無限」の恐怖
by 日詰明男
(友人への返信)

福島原発の惨状を目の当たりにしても、東電の幹部はまるで他人事のような物言いをし、まるでウルトラマンかドラえもんの登場を期待しているかのようです。
現実感の喪失。
ヴァーチャル・ゲームのやりすぎ、漫画の読みすぎは引きこもりだけではなかったようです。

遠くドイツでは、人知学徒たちがこの危機を正しく敏感に感じ取り、人々の心を動かしたのでしょう。
彼らの行動力、組織力は目を見張るものがあります。
80年代のドイツで反原発路線に火をつけたのも緑の党でした。
現在もふたたび立ち上がったのでしょう。

二号機、三号機の破損状態から見ても、冷却系が復活するなどとは到底思えません。
設備が吹っ飛び、海水をしこたま投入し、誰も近づけぬほどの放射線量に至ったこの状況でも、東電や学者はマニュアル書どおりの手順で事をすすめるつもりのようです。
新しく投入する水はすべて汚染され、そのまま心太式に蒸気や排水として環境に出るばかり。
このままむなしい放水と見込みのない修理を何年も何年も続けるのは、国民にとって精神的にも肉体的にも耐えられません。
福島原発はまるでブラックホールのように人の命を片っ端から飲み込もうと口を開けています。
このままだといずれ作業員の不足から徴兵制のようなものが敷かれても不思議はありません。

今の段階で、土砂をかぶせても融けるだけだと学者は言います。
確かにチェルノブイリの石棺のように、土砂やコンクリートを節約したならば、耐久性はあまり期待できないでしょう。
せめて地下核実験の域に持ち込むまでに、大量の土砂で地層を一層一層積み上げていく。
安息角の斜面をなす裾野の広い人工火山の形になるでしょう。
自然火山のマグマだまりも地下深くで岩石を溶かし続けているわけで、ある程度の地層があれば、休火山で収束する可能性はあります。
「核分裂火山」はもうそのような形におさめるしかないのではという諦めの形です。
いまさら地下深くには埋められませんから、山を築くしかないと。

今まで無数のダムや堤防をひっきりなしに建設してきた日本の土建屋さんならば山を築くなど朝飯前のはずです。
こんなに彼らが頼もしく見えたことはありません。
三菱、東芝、日立、石川島播磨には、放射線を遮蔽する重装備の特殊ブルドーザー、バックホー、トラック、コンクリートミキサー車を緊急に製造してもらわないと。

「正しいパニック」という語を多くの人が口にし始めています。
僕が知る限りでは広瀬隆氏が最初に言ったと思います。
この語が今一人歩きしているようです。

発電や送電、蓄電のロスを考えると、どんな方法であれ「電気」は基本的に割のあわないもの。
それでも必要だから人々は利用してきました。
照明や公共交通、コンピュータなら利用する価値はあります。
でもトイレの便座までにはどう考えても電気は必要ではないですよね。
オール電化などもってのほか。
クーラーも皆がせーので止めれば都市はかなり涼しくなるはずです。

原子力は「必要悪」のレベルではなく、正真正銘の「悪魔的なるもの」であることが誰の目にも明らかになりました。
リスクは有限だからこそ技術の中に折り込めるわけで、無限性を帯びた核分裂というリスクは、ねずみ講同様に、有限の地上に存在してはならないシステムなのでしょう。

|| 07:56 | comments (x) | trackback (x) | ||
核分裂火山
by 日詰明男
福島原発の状況は911と並んで世界の色をすっかり変えてしまった。

最悪の場合、いずれかの原子炉が臨界に達し、融けたウラン燃料の塊は核分裂を維持し、放射線を多量に発しながらながら炉心を破り、厚い基礎をも破って地中に沈んでゆく。いわゆるチャイナ・シンドロームならぬ、この場合アルゼンチン・シンドロームである。
そして地下水脈と出合った時に水蒸気爆発が起こり、多量の放射性物質を日本国上空どころか世界中に撒き散らすだろうと言われている。
これは人類がまだ経験したことのない大惨事である。

このまま水をかけつつ、生殺しの状態を維持しながら、何年も何年も放射性物質を含む蒸気を放出し、汚染された水を海に放流し続け、無数の作業員を放射線に晒し続けるしかないのか。
未練がましく対症療法のようなことを続けても、成果の見込みは限りなく薄い。

学者たちはチャイナ・シンドロームを恐れ、とにかく冷やすことが最優先と口をそろえる。
原発信奉者は、原発が復元できると妄信し、未だに廃炉の選択を認めようとしない。

どちらも私には絶望的としか思えない。

とすると次のような可能性に賭けるしかないのではないだろうか。
仮にチャイナ・シンドロームに陥ったとしても、運がよければ地下水脈に出会わず、ウラン塊はそのまま静かに地核へと落ち込むかもしれない。
ならば、放水冷却を諦め、水蒸気爆発のリスクを承知の上で、広瀬隆氏が言うように土砂やセメントで封印するしかないのではないか。
中性子線は無理としても、ガンマ線を遮る程度に重装備したブルドーザーで、どんどこどんどこ可及的速やかにギザのピラミッド級の土砂で封印するしかないのではないか。
人工のマグマならぬ「核分裂火山」である。
爆発するかもしれないし、休火山となるかもしれないし、死火山になってくれるかもしれない。
休火山で収まってくれれば、大気中の放散や海中汚染は最小限に抑えられる。犠牲者も最小限に抑えられるだろう。

水蒸気爆発が起こったらこの賭けは負けである。
しかし考えようによっては、現状のままでもだらだらと緩慢な放射線物質の垂れ流しは広がっているわけで、どっちみち飛散の総量は変わらない。
一瞬か長期かの違いである。

この事件を解決する最善の解はない。

原子炉を放置したまま、生き残った日本国民が難民として世界中に散らばるというシナリオが最悪だろう。世界にまだ逃げ場があればの話ではあるが。


|| 01:06 | comments (x) | trackback (x) | ||
犠牲行為と引き換えの条件
by 日詰明男
大前研一氏によると、福島原発がこれ以上悪化しないという前提でも、現在行われている大量の注水作業を少なくとも3年から5年持続しなければ冷えないそうだ。その間放射線物質出っ放し。
そしてほぼ封印するまでに十数年と見積もっている。
http://www.youtube.com/watch?v=8GqwgVy9iN0
その間、現場で作業する人々は深刻な放射線被曝をせざるを得ない。

そのような犠牲行為を国や会社の命令で余儀なくされる人の心境は察するに余りある。
彼らの犠牲行為の結果、再び原子力依存体質の社会が存続するとしたらまったく救われない話だ。
そのような社会は救われるに値しない。
もしこの社会が本気で反省し、日本全国の原子力発電所をすべて廃炉にするという決定を下したのならば、福島原発に臨むすべての犠牲行為は本当の意味で生きてくる。

原子力に依存せず、既存の水力だけで幸せに暮らしているニュージーランドやコスタリカを見習おう。



|| 10:48 | comments (x) | trackback (x) | ||
福島原発事件
by 日詰明男
ついに最も恐れていた原発事故が起こってしまった。

地震、津波、火災による壊滅、そして過酷な避難生活。
数万人に及ぶであろう死者。
1000年に一度の超弩級天災である。
それでも希望を持って生き抜こうとする人々を報道は伝える。
自然災害に限定されていたならば、諦めもつくし、希望も見つけられる。
世界中から集まる同情や励ましも素直に受け入れられる。
事実、歴史を見ても、人はどんな天災にあってもたくましく復興を遂げてきた。

さあ復興という気運が生まれるか生まれないうちに、それを踏みにじるように、本来なくても良かった原子力発電所の崩壊が次々と起こった。
これはあまりにも過酷である。
目に見えず、静かな、そして半永久的に続く、容赦ない津波がじわじわと押し寄せている。
この津波には緊急退避してしのぐ最寄の高台もない。
この不可視の津波には救いが見出せない。
前政権や企業の宣伝するまま、原子力発電所建設を許してきた私たちの自己責任である。
野放図に原子力発電を増やし、ほしいままの電化生活を享受してきた報いである。
運よく地震や津波を逃れた人を、ふたたび谷底に突き落とすような仕打ちである。

福島原発の冷却機能喪失の第一報が報じられた時、まず私の脳裏に浮かんだのは30年前に見た映画「チャイナ・シンドローム」だった。
以後私はあらゆる報道から目が離せなくなった。
固唾を呑んで現在もできる限りの情報を注視し続けている。

にもかかわらず、マスメディアは昨日あたりから通常放送に戻りつつあり、バラエティ番組に興じている。事件性の大きさは浅間山荘事件の比ではないと私は思うのだが。
被災地以外の原子力発電所は自主的に停止する気配もない。
こんな危機意識の低さでいいのだろうか?
全世界の原子力発電所は即刻「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」に着手して欲しいというのが率直なところである。
完全に冷やして閉じ込めるまでに十数年、あるいは数十年かかるのだから、その猶予に起こりうる天災、人災、テロを考えれば、廃炉は早ければ早いほうが良い。

福島原発を封印するとなると、このモンスターの首に誰かが鈴を付けなければならない。
多くの人を救うために、放射線の雨あられを受け、爆発の危険や無駄死にを覚悟で立ち向かう行為は正真正銘の「英雄」である。
今回も既に放水作業など命がけの作業を行った多くの無名の英雄がいた。
英雄行為には最大級の尊敬をするが、しかし今回の英雄行為だけは何ともやりきれなさが残る。
子どもは別として、原発建設を放任した私たち大人は、英雄の献身によって救われる資格があるのだろうかと。
強欲から原発を推し進めてきた人たちは、英雄の死後もしめしめとまた原発から恩恵を受け続けるだけなのではないか。
つまりこの英雄行為はあまりにも報われないのである。

先日のテレビ画面で、津波で廃墟となった原子力城下町の、つい10日前までは賑やかに稼動していたであろう目抜き通りにかかる看板には「明るい未来・原子力」という文字が虚しく垣間見えた。

1000年に一度の天災だから許されるというものではない。
1000年に一度だろうが一億年に一度の天災だろうが、最悪の事態が想定される限り、原子力発電は作ってはならなかったのである。
「地球をうっかり壊しちゃった。」と子どものようにべそをかいても、尻拭いしてくれる親はどこにもいない。
原子力というモンスターを人間が制御できると奢り高ぶったことがそもそもの間違いだ。
福島原発事件はバベルの塔の崩壊に匹敵する黙示録的事件である。
日本のみならず原子力発電保有国すべてがその共犯者である。

|| 22:14 | comments (x) | trackback (x) | ||
原子力発電(続き)
by 日詰明男
ウラン濃縮を民間子会社に発注し、ウランのバケツリレーを許していた国ですから。
ダンボール入り肉まんの方がよほど安全です。

補助金と鉄筋コンクリートをふんだんに使って原子力発電所を建てれば、土建屋は一時的雇用に沸くし、自治体も見返りとして多額の交付金や箱物施設をもらえますから、近隣住民の生命は二の次というわけでしょう。
電力会社もうしろめたさからか直接近隣住民にも迷惑料(現ナマ)をばらまいているとも先日ラジオで聞きました。

電気代は一見安く見えますが、こうした闇経費が税金の形でジャブジャブ使われているわけですから、実は非常に高くついているはずです。

原子力発電は万全な最終処分方法が確立されないまま見切り発進し、今日に至っています。
核廃棄物はたらいまわしにされるか、あるいはどこかに無造作に保管されているだけです。いつかなんとかなるだろうということで。
近視眼的な、あまりに近視眼的な。。

発電所が事故や寿命で使えなくなった後、人類が払う代償は想像を絶するものになるでしょう。
そんなハンパ物を、この地震国で50基以上も建てれば、事故は起こるべくして起こるというものです。

電力会社はテレビCMなどで原子力のイメージアップにも熱心ですよね。
地方の科学博物館では、原子力発電所がスポンサーになって「明るい未来」を謳う子供向けの科学ワークショップが開かれています。
その効果あってか、世間では原子力による電力が二酸化炭素を出さないからクリーンであるとか、化石燃料に比べて安価だとか、とんでもない空想的イメージがまかり通っています。
よりによって原発がエコロジカルだと言い出す人まで出てくる始末。

柏崎刈羽原子力発電所の関係者は他人事のように「事故は起こらないという前提で作られているから、想定外の事故がおこったらどうしようもない」とお役人のような言い方をしますね。


|| 09:58 | comments (x) | trackback (x) | ||
原子力発電
by 日詰明男
柏崎刈羽原子力発電所における原因不明の漏水が問題になっている。

原子力発電所建設の現場監督をしていたエンジニア故平井憲夫氏による「原発震災を防ごう」という驚くべき報告に目を通そう。
http://members.at.infoseek.co.jp/genpatsu_shinsai/

この著者は発電所内部での恒常的な被爆により、癌で亡くなったそうである。

こんなものが日本には52基もあるとは。。。
招かれざる未来への遺産以外のなにものでもない。


|| 15:48 | comments (x) | trackback (x) | ||


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